肝Coインタビュー
「肝炎医療コーディネーター」7年の軌跡
臨床検査技師肝Coの研修を受講してから7年、その軌跡を追う
小城市民病院
臨床検査技師 松永滝平さん
2012年に佐賀県の肝炎医療Coの研修を受講
患者さんとの距離の近さを感じるように
当時は検体検査(採取した血液などの検査)が中心でしたが、現在は心電図や腹部エコー検査を担当しています。
そのおかげで患者さんと触れ合う機会が増え、直接声掛けもできるようになりました。
陽性者を最初に把握できる臨床検査技師は、対象者を拾い上げ、担当医と肝臓専門医をつなぐ役割を担っていますが、以前の仕事では患者さんと接することがなかったので少しモヤモヤしていました。今は、コーディネーターとして活動している実感があります。
院内の仕組みづくりでは、陽性者を早期治療につなぐため、情報を共有できる電子カルテのアラートシステムを確立しました。
スタート当初は、担当医から「どういうタイミングで患者さんに説明して専門医を紹介すればいいのか分からない」という意見も多く、分かりやすいようにフローチャートを作成。
スムーズに連携できるようにシステムを整えていきました。
患者さんと信頼関係が築ける声掛けを
半年に1回の定期検査なので顔なじみの患者さんも多く、まずは「半年間早かったですね」「最近はどうですか?」など、何気ないトークで話しやすい雰囲気をつくります。
C型肝炎の患者さんの中には、SVR(体内からウイルスは完全に排除された状態)を達成したのに、その後も続く定期検査を疑問に思われる方もいらっしゃいます。そういう時は、SVR後でも発がんの可能性はまだ続くことから、定期的な検査が早期発見につながり、多くのがんもそうであるように、早期の状態で治療すれば命にかかわらないことをお伝えしています。
患者さんとの触れ合いがあるからこそできる声掛けで、“対象者の拾い上げ”から次の段階の取り組みだと思っています。
積極的な連携で活躍の場を広げよう
病院全体で肝炎の拾い上げをしていこう!という体制が整っていなければ、せっかくコーディネーターの研修を受けても思うように活動できないかもしれません。
最初の頃は私もそうでしたが、肝疾患センターのサポートのおかげで体制を整えられ、アラートシステムの構築も実現できました。
他病院の臨床検査技師で、コーディネーターになった方と会ったこともありますが、思うように活動ができていないと言われました。当院は、臨床検査技師が4人いますが研修を受けているのは私一人。普段は腹部エコー検査を担当しているので、検体検査の結果はリアルタイムには分かりませんが、同僚が「陽性の患者さまがいらっしゃったよ」と声をかけてくれます。少ない人数でも周りと連携することで、コーディネーターとして活動できることをぜひ伝えていきたいです。
感謝の言葉が大きなモチベーションに
検体検査では「陽性」か「陰性」でしか判断しませんが、患者さんにどういう背景があるんだろうと調べるのが肝炎医療コーディネーターの役割だと思っています。
自分の声掛けがきっかけで早期治療につながると嬉しいし、患者さんから「ありがとう」と感謝の言葉をいただくたびに研修を受けてよかったと思っています。
近年、啓発や治療の進歩によってB型肝炎、C型肝炎に関しては患者数が減少しており、今後はSLD(脂肪性肝疾患)の時代になると予想されます。アラートシステムを導入して成果が出ているので、そのノウハウを活用し、今後はSLDの対象者の拾い上げにも取り組んでいきたいと考えています。