空模様空模様

活動事例

肝CoインタビューVo.9

マスター肝Co

拠点病院ではない。
それでも、肝Coは「続けられる形」をつくれた
─ 役割が見えなかったところから、
“一人にしない”チームへ─

肝臓専門医師 日髙勲さん
看護師 上利早紀さん

「拠点病院ではない。相談窓口があるわけでもない。そんな市中病院で、一人の看護師が抱え込んだ重圧は、肝臓専門医との出会いを経て「みんなで担うチーム」へと変わっていった。これは、特別な病院や特別な人の物語ではない。目の前の患者さんのために悩み、走り続けた一人の肝炎医療コーディネーター(以下、肝Co)と、彼女を支えた「一緒にやろう」の言葉の軌跡である。

第一章:はじまり ─ 「本当に、一言でした」役割が見えなかった日々

「本当に、一言でした。師長から『こういう資格があるけど、取ってみない?』って何気なく声をかけられたのが始まりなんです」。上利さんがそう振り返るように、肝Coになったきっかけは些細なものだった。当時すでに院内には「肝炎対策チーム」があり、肝Coとして活動している外来看護師が一人いた。そのため、上利さん自身には「自分が中心になって何かをする」という意識はほとんどなかったという。
研修を受け、資格を取得した。けれど、現場に戻ってみると何をすればいいのか分からなかった。拠点病院ではない。相談窓口があるわけでもない。役割がはっきりしないまま、時間だけが過ぎていった。

第二章:突然の重圧 ─ 「考える余裕もなく、ただやるしかなかった」

状況が大きく変わったのは、突然のことだった。 それまで肝炎対策を一人で担っていたリーダー肝Coが退職し、十分な引き継ぎがないまま、上利さんがその役割を引き受けることになったのだ。患者の拾い上げ、結果説明の確認、会議の調整・報告。気がつけば、自分一人ですべての業務に対応していた。
「とにかく大変でした。考える余裕もなく、やらなければならないから、ただやる、という感じでした」。目の前の業務をこなす日々。決して余裕はなかった。それでも続けられた理由を尋ねると、上利さんは迷わずこう答えた。「患者さんのためです。自分のためでも、病院のためでも、医師のためでもないんです」。拾い上げた患者が治療につながった時、医師から「この人、治療になりましたよ」と聞いた。「数は多くなかったです。でも、その一人がいたから、“やってよかった”と思えたんです」。使命感に近い思いで、上利さんはその時期を走り続けていた。

第三章:変化の起点 ─ 専門医の赴任と「一緒にやろう」のスタンス

孤独な奮闘が続いていたチームの空気を変えたのは、肝Coの活動を積極的に支えようとする肝臓専門医(日髙先生)の赴任だった。 「肝炎ウイルスの拾い上げは重要です」。医師のその一言が、活動を“個人の頑張り”から“病院全体で考えるべき課題”へと引き上げた。肝臓専門医の関わり方は、指示や命令ではなかった。「一緒にやろう」
そのスタンスが、現場の空気を変えたのだ。検査部、外来、病棟、看護師、メディカルクラーク。それまで会議に「参加するだけ」だったメンバーが、一人ひとり役割を担うチームへと変わっていった。役割が見えると、不思議と動きやすくなる。活動は、少しずつ安定していった。

第四章:次への仕組みづくり ─ 自分が抜けても回る「一人にしない形」へ

役割分担ができたとはいえ、「正直、楽になったわけではなかったです」と上利さんは振り返る。 さらに病棟への異動、そして自身の病気が重なった。その時、はっきりと感じた。「このやり方では、続かない」。一人に負担が集中する体制は、誰かが抜けた瞬間に崩れてしまう。それを、身をもって実感した。
「“後任を育てる”というより、“最初から一緒に担う”形にしないといけない、と思いました」。肝臓専門医と相談しながら、みんなで担当する役割を分け、流れを共有する。強制するのではなく、一緒に考え、一緒にやる。いわば、専門医とリーダーが一緒に動く二人三脚の体制だった。「自分が抜けても回る形を、今のうちにつくっておかないといけないと思ったんです」。

振り返って、いま伝えたいこと

上利さんは、少し考えてから、こう話してくれた。 「最初は、何をしていいか分からなかったです。でも、流れの中で役割が生まれて、活動が継続できる形ができていきました。特別な病院じゃなくてもいい。特別な人じゃなくてもいいと思います」。
患者さんのために、ひとりひとりが少しずつ関わっていく。継続できる仕組みをみんなで考える。それだけで、肝炎医療コーディネーターの活動は、ちゃんと続いていく。

肝臓専門医(日髙 勲先生)よりメッセージ

【上利さんへ】

リーダー肝Coとして、院内の肝Coをまとめてくださり、様々な活動が継続でき、感謝です。
病棟に異動になったあとも、新しいリーダーにすべて任せるのではなく、「一緒にやってみよう」と後任を指導してくれてありがたかったです。これからも「一緒に」頑張りましょう。

【この記事をご覧いただいている肝Coの皆さんへ】

もし、肝Co活動に悩まれているなら、肝Coの人数、職種を増やし、一人で悩まず、みんなで考えてみてください。
そして、活動には医師を巻き込んでください。きっとできることが広がるはずです。

この事例が伝えていること

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